人はなぜWi-Fiがあるにもかかわらず、
ギガを消費してしまうのだろうか?
この問いに対する明確な答えを、私はまだ持っていない。
ただひとつ言えるのは、少なくともその瞬間の私は、
かなり愚かだった、ということだ。
…もう数か月前の話になるのだが、超絶久しぶりに
スマホをつないだ状態で、パソコンのiTuneを開いた。
新しい音楽を入手したかったからである。
するとiTuneから
「新しいお洋服が欲しいの!ねぇダーリン☆」的に
アップデートを頼まれたので、
「いいよいいよ。欲しいもの言いなよ」と
気前のいい男を演じながら気軽にオッケーボタンを押した。
だってWi-Fiだし。タダだし。
クリックをきっかけにiTuneは
セーラームーンのようにスルスルと
「ムーンクリスタルパワー・メーイク・アーップ!」
と言わんばかりに新しいバージョンをダウンロードしてゆく。
…しかし、なぜか知らんが何回かエラーになる。
「てへ☆変身しっぱいしっぱい♪」
「しょうがないなー」
なんて感じでiTuneとキャッキャしながら「再度試す」を押す。
なのに、何回やっても変身…いや更新がキマらない。
そろそろキメポーズを取ってもらいたいのに、
いつまで経っても変身シーンが終わらない。
アニメなら敵が待ちくたびれて帰りそうだ。
そのうち、1回のダウンロードが
20分30分と経っても終わらなくなる。
「ム…ムー…ンクリ…ス…タ……る」
と、モソモソしだす。
あれー?
なんかおかしいなーぁ??
と思って調べたら、ネットの速度が極端に遅くなってる。
なぜ?Wi-fiの調子悪いの?お腹こわした?
と思っていたのだが、原因はまったく別のところにあった。
なんと、Wi-fiが通っている(しかも有線)にもかかわらず、
つなげていたスマホの方の回線を使っていたらしいのだ。
!!!!!!!!!!?
なんで?なんでだよ!?
贅沢な食べ放題メニュー(時間無制限飲み放題付き)が
目の前に並んでいるのに、
「あ、こっちがいいな」
って、別料金のプリンとか頼むような所業はっ!?
「え…だって、こっちの方が、つながりやすかったから…」
って、いや、空気読めよ。ってか電波読めよ。
なんでスマホのギガをメリメリ消費してんねん!?
しかも、それが月初。
今月、ずっと激遅・細長ネット回線かよ!?
とiTuneにツッコんだところで、
「だってぇ~、好きにしろって言ったじゃ~ん」
と、てへぺろな感じで申し開かれたので、
その月は泣く泣く追加でギガを購入した。負けである。
ちなみに、スマホをつながない状態で更新したら
あっさり一発で完了した!
「できた☆」
できた☆じゃねぇよ。
もうすでに俺が、おしおきされた気分だよ。
そこから私は変わった。
Wi-fiが通っている場所でも、いつギガを食われるか、
気づかぬうちに餓鬼のように貪られるか。
ギガ餓鬼疑心で気が気でなくなった。
…ああ、そうだ。
いま、うまいこと言ったと思っている。
話が逸れたので、そのままさらに
華麗に逸らしていこう。
ご存じ通り、
別にギガが食われても、1000円くらい払えば
快適ネットライフは回復する。
しかし、そこにお金を使いたくない。
人はそれぞれ、お金を使ってOKなものと
これはイヤ!というものがある。
私の場合は、食べ物やお酒には
けっこうガンガンお金を支払っちゃうし、
そこは満足できればいい。
また、100円ショップで売っているような食用ラップでも
事足りるのに、高いクレラップをチョイスする。
しかし、タクシーで目的地に到着した瞬間に
メーターが「カチャ」と上がった時は敗北感を感じるし、
駐車場であと2分早く来れば100円追加されなかった時は
「この金食い虫め!」と、投入口に心の中で罵倒する。
スマホゲームのアプリに課金するのは、
人生の落伍者のような気持になる(でもする)。
そんな私にとって「ギガに追加料金を支払う」というのは、
私の中では「あってはならないこと」なのだ。
そこから私の「ギガ節約生活」の幕が切って落とされた。
家の中では「モバイル通信」を必ずオフ。
外にいる時も、基本航空機モード。
電車移動の際にも最低限しかスマホを開かず、
読書などにシフトした。
――そして、あれから、4カ月。
この記事を書いているのは月の半ばであるが、
私は今月「50メガ」しかモバイル通信をしていない。
ギガなどいらぬ。メガでいい。
そのうちメガすら脱却し、キロやビットになるかもしれぬ。
そして、新しい世界が開かれた。
考えてみれば、ギガを消費してまで
外でスマホから得たい情報など、ほとんどなかった。
友人からのメッセージは受け取れなくなるが、
それは30分に1回くらい、モバイル通信をオンにすれば
そこまで迷惑はかけない。
「デジタルデトックスしました!えへへ」
なんて、のたまうまでもなく、
今の私は外出時は常時デジタルデトックスだ。
ああ、こんなにも世界は美しかったのか。
私はいつのまにか、スマホの奴隷となっていたのか。
と、すがすがしい気持ちでいっぱいになった。
そして振り返ってみれば、
あの時iTuneがゴクゴク飲み干したギガよりも、
毎月の通信費が安くなっていた。
ああ、勝った。勝ったんだ俺。
何に勝ったのか本人も全く分からないが、
そんな優越感にひたる毎日である。
しかし、はたから見れば今の行為は
「単なるケチ」であり、
「スマホ奴隷からの解放宣言からギガ奴隷に」
みたいな流れでしかない。
しかし、それでいいのだ。
人はたぶん、何かの奴隷でいながら、
別の何かに勝った気になれる生き物だから。
みなさんは、何にお金を使って、
何をケチりますか?
私は、たぶん、これからもよく分からないままです。
ではでは。
