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山脈の一族

そこは世界でも有数の山脈をいただく大地。
 
男たちは、かがり火を取り囲み、
槍を高らかに振り上げながら
今日の狩りの成果を踊り、歌い上げる。
 
その光景を遠目に見る族長。
そしてその族長の眼前に、しがみつくように
ひれ伏す子どもがいた。
 
今日の狩りは、ひとまず成功には終わった。
しかし、その中で役割を果たせなかったのが
その子どもだ。 
 
「族長、、、私の合図、、、
 私の口笛は、届かなかった。。。
 大人たちの口笛は、あのように
 高らかに鳴るのに。。。なぜ…」
 
族長は、子どもが悔し涙を流していることに
気がつかないふりをすることにした。
 
子どもはさらに続ける。
 
「雲の動きも、読めなかった、、、
 あの曇天が待ってくれなければ
 今日の狩りは失敗していました…」
 
族長は、やさしい目で
子どもに語りかける。
 
「お主は、まだ若い。幼いと言ってもいい。
  幼いおなごであるお主が、
 そこまで悔やむことはない」
 
「し…しかしっ!!!!」
 
少女は食い下がるように族長に嘆願した。
 
「知りたいのです!
 一人前の狩人になる方法を!
 教えてください!族長!
 いや、お祖父さま!」
 
族長は夜の帳の降りた山頂に
目を移して、諭した。
 
「わしには、今言えることはない。
 我々の守り神、アルムのみぞ知らん」
 
こうして、一族の夜はふけてゆく。
 
 
 
【原作:アルプスの少女ハイジ『おしえて』】
 
(前奏)
口笛はなぜ 遠くまで聞こえるの?
あの雲はなぜ 私を待ってるの?
おしえて おじいさん
おしえて おじいさん
おしえて アルムのもみの木よ
 

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