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あの人へのラブレター

 
もう会うことのない
「台湾のあの人」へのラブレター。
 
 
かなり前の話だけれど、
台湾に旅行に行ったことがある。
 
 
 
その時に、
 
「普通の観光地じゃないところに行こう!」
 
と友達同士で盛り上がって、
あまり後先を考えずに、とある茶畑に行ってみた。
 
 
その茶畑は素晴らしかったんだけれど、
あまり後のことを考えていなかったので、
帰り方が分からなくなってしまい、
 
「どうしよう。。。」
 
と、途方に暮れていた。
 
 
 
 
そこに。
 
 
人がほとんど通らない道を
頼りなげに歩く、
一人のおばあちゃんが現れた。
 
 
 
私たちは、
 
「もしかしたら」
 
という、淡い期待を持って、
そのおばあちゃんに帰り道を聞いてみたんだよね。
 
 
そのおばあちゃんは、
少し日本語をしゃべることが出来て、
私たちの言葉に、必死に耳を傾けてくれた。
 
 
こっちが分かるのは、泊まっていたホテル名と
ホテルの住所だけ。
 
 
でも、そんな少ない情報から、おばあちゃんは
 
 
「じゃあ、あのバス停からバスに乗るといいよ。
 あたしも丁度、バスに乗るところだから
 途中まで一緒に行こう」
 
 
と言ってくれた。
 
 
 
バスはまもなくバス停に到着し、
おばあちゃんと私たちはバスに乗り込んだ。
 
 
バスの車中、おばあちゃんは
昔、日本人に世話になった話をしてくれた。
 
 
「だから、日本人であるあなたたちと
 話せるのは嬉しい」
 
 
とも言ってくれた。
 
 
 
 
 
 
 
時間は、あっという間に過ぎ、
いつのまにかバスは、
広大な茶畑から、都会の街並に入っていた。
 
 
 
おばあちゃんは、
私たちのホテルに一番近いバス停を教えてくれ、
 
 
なぜか、おばあちゃんも一緒に降りた。
 
 
 
私たちが不思議に思っていると、
おばあちゃんはさっさとタクシーを捕まえて
 
「タクシーの運ちゃんにホテル名を教えておいたから、
 このまま乗っていけばいい」
 
 
と言って、私たちに手をふった。
 
 
 
私たちがおばあちゃんに名前や連絡先を聞こうとすると、
はずかしそうに
 
「そんなことは、いいから」
 
と言って、私たちをタクシーに押し込めた。
 
 
 
 
そして。
 
 
私たちが、タクシーの中から
おばあちゃんの背中を見送っていると、
 
 
 
 
おばあちゃんは、
 
 
「来たのと反対側のバス停」に歩いて行った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 
 
 
 
・・・そのままタクシーは走り出し、
まもなく私たちの泊まっていたホテルに到着した。
 
 
 
私たちがタクシーの運ちゃんに
代金を支払おうとすると、
 
 
「ん?タクシー代は、さっきのおばあちゃんから
 もうもらっているよ」
 
 
と、伝えられた。
 
 
 
 
 
 
 
・・・
 
 
もう、二度と会えない、台湾のおばあちゃん。
 
 
 
直接の恩返しはできない。けれど。
 
 
もし、誰かが困っている時には、
私も、台湾のおばあちゃんがしたことの
1%でもやれる人間になりたい、と思っている。
 
 
ではでは。
 

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