ある夏の日、ヒマワリの精は言いました。
「ああ、今まで色々とあったけれど、
やっと分かった!」
「やっぱり感謝が大切なんだよ。
太陽に感謝、大地に感謝、
水や、虫たちにも感謝だね」
ヒマワリはサンサンと照りつける太陽を見上げて
自信たっぷりに背筋を伸ばしました。
「昔は土に邪魔されて、
なかなか芽が出なくて怒ったりしてた。
雨ばっかりでウンザリとかそういうこともあった」
「でも、そういった苦労があって、
今は毎日、怒ることもないし運もある。
仲間たちにも恵まれてる。
もう、以前のぼくに戻ることは、ありえない」
そんな話をシクラメンの精は静かに聞いていました。
たしか以前は、私も大きく開花して
今のヒマワリのようなことを言っていたような。
ただ、私には感謝が足りなかったのか?
ヒマワリのような努力を怠ってしまっていたのか?
今は、誰からも注目されていませんでした。
あの時から、何が変わったんだろう?
そんなに、私の行いは悪かったのかしら?
完全に「この世のすべて」を悟ったことを
「やっと分かった、分かったんだよ!」
としゃべり続けるヒマワリの姿を羨ましく思いながら
シクラメンは、今やれることをやっていきました。
ヒマワリは、自分の未来に何の疑いも持たず、
「これから、もっと飛躍して
世の中に貢献していこう!
この感謝の気持ちを忘れずに!」
と、シクラメンのように しょぼくれることのないよう
自分がどのように今の地位を手に入れたのかを
みんなにも伝えていきました。
サクラは、あんなに人気だったのに
あっという間に人が離れて行った。
傲慢だったに違いない。教えてあげないと。
イチョウは、みんなから愛されたけれど
枯れゆく姿だった。
みんなからの人気は同情だったのかもしれない。
でも、ぼくは違う。
太陽にも、大地にも、水にも、虫たちにも
本当の感謝を体得したから、今がある。
さぁ、これからの明るい未来を、どう描いて行こう?
ぼくが、シクラメンやサクラやイチョウの
お手本にならなくちゃいけないからな。
みんなに、あり方ってのを教えてあげなくちゃ!
そして秋になり、冬になりました。
季節はめぐり、シクラメンの花が開きました。