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胸中喰種:キョーチューグール

告白する。
僕は一匹、モンスターを飼っている。
 
そのモンスターは、目には見えない。
僕も実際に姿を見たことはない。
ただ、確実に僕に巣食っている。
 
そう。僕の、心に。
 
 
---
 
 
彼。。。いや、あるいは彼女なのか?
あるいは獣なのか?性別は分からない。
そんなものは、ないのかもしれない。
 
いずれにしても「それ」は、
ひとつのものしか喰べられない。
 
 
「彼」は、僕の心の中にある
 
「愛情」
 
だけを喰べる。
 
 
僕の心が穏やかで愛情に満たされていると
「彼」も大人しくしている。
 
しかし、ふとしたはずみで
「彼」は、活動を開始してしまう。
 
 
たいていは、夜。
僕が一人でいる時に。
 
 
---
 
 
「彼」は一度、僕の心にある
愛情を喰べはじめると
際限なく喰い散らかしてゆき、
 
「モット…モット…」
 
と、自分の飢えを訴える。
 
 
人に対する優しい気持ち。
誰かとの絆、つながり。
 
そんな僕の心を喰べてゆき、
 
 
「本当に、あの人は僕を愛してくれているの?」
 
「実は、利用されているだけなのでは?」
 
「あの時のあの行動は、嘘だったんじゃ…?」
 
 
という疑念に染めてゆく。
 
 
---
 
 
恐ろしいのが、その後だ。
 
「彼」の喰べるがままにしておくと、
しだいに、宿主である僕自身が愛情の飢えを感じ、
誰かの愛を捕喰しにかかってしまうようになる。
 
 
僕を、かまって。
 
僕のことを、好きだと言って。
 
あなたの時間を、僕に頂戴。
 
 
相手は何も悪くなんかない。
相手は何も変わってなんていない。
 
なのに、僕が、僕自身に棲みついている
「彼」の好きなようにさせてしまったが故に、
誰かからの愛をむさぼらざるを得なくなる。
 
 
そして、その飢えは、
喰えば喰うほどに、増大してゆくのだ。
 
 
---
 
 
僕は、自分の胸中に
そんな喰種(グール)が棲んでいるのを知っている。
 
そして「彼」は、僕の命が果てるまで
僕の胸の奥に居座り続けることも分かっている。
 
なぜならば、それは僕の持つ本性のひとつなのだから。
 
 
もしかしたら、いつかは居なくなるのかもしれない。
 
でも、今まで生きてきた中で
「彼」を駆逐しようとして、成功したためしはない。
 
きっと、闘えば闘うほど、
駆逐しようすればするほど猛威を振るい
僕にとっての脅威となってゆくような気もする。
 
 
---
 
 
だから僕は、小さな決意をしている。
「彼」と共生してゆこう。と。
 
そして、そんな「彼」のためにも、
宿主である僕自身は、できるかぎり、
常に愛情を満たしておこうと。
 
 
そうなんだ。
 
飢えを感じなければ、
「彼」は、なにもしない。
 
さらに言えば、
「彼」が活動したとしても、そんな「彼」に、
 
「大丈夫だよ。ありがとう」
 
と声をかけ、なだめてあげればいいだけなのだ。
 
 
「彼」は、僕のハートを喰べる。蝕む。
 
 
しかしそれは、僕が「彼」を勝手にさせ、
僕が「彼」自身を認めてないせいなのだ。
 
 
---
 
 
いつまた、「彼」が闇に乗じて
うごめきだすかは、僕には分からない。
 
最近は、来ない。
もしかしたら、もう来ないのかもしれない。
 
。。。いや、たぶんそれはないだろう。
 
 
だからこそ、今のうちに
他の人との関わりを通して、
愛情をストックしておこう。
 
そんな風に思う。
 
 
---
 
 
僕と関わる他の人が、僕と同じような
「喰種」を飼っているのかは、知らない。
 
でも、仮に飼っているのだとしたら
僕と同志なのだから、
なおさら優しく、仲良くできればいいな。
 
 
 
胸中の喰種。
 
 
 
付き合っていこう。これからも。
 
 

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