よくセールスとかで教えられるのが、
「メリットだけでなく、ベネフィットも訴えろ」
なんてのがある。
メリットってぇいうのは、
その商品やサービスが持っている
実質的な利点や特性のこと。
それに対してベネフィットというのは
その商品を手にすることで得られる
副次的な効果や恩恵のことだ。
例を出さないと分かりにくいだろうから
ちょっと具体的に説明をすると。
たとえば、ダイエットに関する商品やサービスが
あったとする。
その商品やサービスが持っているメリットは
たとえば「3キロ痩せる」とかだろう。
それに対してベネフィットは、
その3キロ痩せることによってもたらされる効果。
なので、たとえば
「スリムジーンズを履いて街を歩ける」とか、
「異性から好意的な目で見られる」とか、
「自分に自信が持てるようになる」とか、
そういったことになるだろう。
もう1つ例を出すのであれば、
高級時計なんかを想像してみて欲しい。
その商品のメリットは、
「時間が分かる」
「ダイヤモンドが散りばめられている」
とかなのだろうか?
そしてベネフィットは、
「歴史あるブランドを所有しているという満足感」
「自分にステータスを感じることができる」
「他の人から注目される」
などが挙げられるかもしれない。
そんな感じで、
商品に付加価値を感じてもらい、
通常よりも高額な商品やサービスを購入してもらうために
ベネフィットは欠かせない、と言われている。
それについて、否定するつもりはない。
まったく、その通りだな、と思う。
ただし。
長年コピーライターをやってきて
商品やサービスの価値を語るのに、
「ベネフィットの、その先」
があるようにも感じている。
今から話すのは、
ベネフィットと言えばベネフィットの話だ。
ただ、かなり「高次」のベネフィットに
分類されるんじゃないかな?と思う。
それに名をつけるとしたら、
「パーティシペイト(参加欲)」になるだろうか?
ベネフィットは、
「お客様がすでに理解している未来」であり、
理解していなかったとしても、お客様に説明をすれば
すぐにピンときてもらえる話だ。
「痩せたらモテる」とか、
「時計をつけたらステータスを感じる」というのは、
商品に興味のあるお客様だったら、想像ができる。
ただ、
それとは別のニーズも、人間は持っていると思うのだ。
それが、
「参加したい」
「そのストーリーの中に入りたい」
という、言うなれば「パーティシペイト」といったものだ。
たとえば、発売当初のiPhoneを説明するのに、
スティーブジョブズはメリットを語ったのか?
というとNOだ。
じゃあ、
「iPhoneを手に入れたら、
あなたのステータスが上がりますよ」
とか
「iPhoneを手に入れたら、
時間が節約できますよ」
といったベネフィットを伝えたのだろうか?
そうとも言えるかもしれないが、
それとはちょっと違うようにも思うのだ。
スティーブジョブズは、
iPhoneのある日常のストーリーを語り、
誰も体験したことのない世界へ招待をした。
そして「その世界に参加したい」
と思った我々が、iPhoneを手に入れたのではないだろうか?
アップル社の製品は、そういった
「そのストーリーに参加したい」
といった「パーティシペイト」に訴求しているように思うのだ。
アップルの製品だけじゃない。
たとえば、寄附なんかもそうじゃないかと思う。
寄附のメリットは?
というと、なかなか難しい。
「困っている人たちが笑顔になる」
のは、果たしてメリットなのか?
また、
「寄附をすることで、自尊心が満たされます」
「寄附という善行で得られる満足感」
というベネフィットだけで、私たちは寄附するのだろうか?
私はそうじゃないと思う。
そうではなく、
「困っている人がいたら、お互いさまじゃないか」
「苦しんでいる人たちに、少しでも力になりたい」
という、「社会を構成する一員として、参加したい」気持ちが
寄附という行動に結びついているのではないか?と思う。
お祭りとかも、近いのかもしれない。
「踊るアホウに、見るアホウ。
同じアホなら、踊らにゃ損損!」
というのは、
「お祭りで得られる高揚感」
というベネフィットを超えた
「参加したい!」
「同じ熱を感じたい!」
「共有している側になりたい」
という「パーティシペイト」があるからなのではないか?
とも思うんだよね。
さてさて。
今回の話は、現時点では私の中でも
仮説の域を出ない話ではある。
でも、
「実質的なメリット」
「そこから得られる恩恵であるベネフィット」
を超えた、
「そのストーリー側に参加したいパーティシペイト」
といったものが、人間にはあるような気がする。
そこに実質的な「得」がなかったとしても、
「語られた未来の側でありたい」
「傍観者ではなく、参加者でありたい」
という人間の気持ちをゆさぶられたら、
人は行動し、お金も時間も出すのだと思う。
あなたは、どう思う?
私は、そういう意味も踏まえて、
よりよいストーリーテラーになれるよう、
これからも精進したいと思いまする。
ではでは。