昔々、私が働いていた酒類業界での
ヒット商品「アサヒスーパードライ」誕生秘話。
発売当初から爆発的なヒットを飛ばし、
今でも「定番ビール」の地位を不動のものにしている
「アサヒスーパードライ」。
この商品が開発される以前から、ビール工場では
「よりおいしいビールを作る」
という研究が、日夜続けられていた。
(もちろん、今も続けられているだろう)。
新しいビールの試作品が出来あがると、
工場の研究員たちが、
「このビールは、商品として売れるのか?」
「よりおいしくするには、どうすればいいのか?」
という事を吟味するために、試飲を繰り返していた。
厳しい競争に打ち勝つビールを作るために、
試飲をする研究員たちは、自分の味覚を
最大限に引き出すために、様々な制限をされていた。
コーヒーなどの刺激物は、飲んではいけない。
タバコなどはご法度。
試飲の時間は、最も味覚の感度が高い午前中。
などなど。
そんな環境下で開発されたビールは、
厳しい試験をクリアしたビールなわけだから、
当然おいしいはずだった。
しかし、売り上げの方は、どうもパッとしない。
そんな時、外部から招かれた
「ビール素人」が、社長に就任した。
その社長の号令のもと、
当時売り上げ低迷、業界ほぼ最下位の
アサヒビールの大躍進がはじまる。
大躍進のきっかけは、たくさんあるんだけれど、
大きなきっかけのひとつに
「ビール試飲のやり方」を変更したことがある。
今までは、コーヒー厳禁、タバコご法度など
味覚を最大限に引き出した時に
「うまい!」
と感じるビールが市場に出されていた。
しかし、
考えてみれば、実際にビールを飲む一般消費者は、
そんなストイックな状況でビールなんか飲まないわけだ。
朝からコーヒーをガブガブ飲み、
人によってはタバコをプカプカ吸い、
味の濃いランチを食べながら、クタクタになるまで働く。
そして、残業も終えて疲れ切った身体で
ビールを流し込むわけだ。
研究員が試飲している状況と、あまりにも違う。
そこで、ビールの研究員たちの
試飲のやり方に変更が加えられた。
研究員たちも、朝からコーヒー飲んでOK。
タバコもOK。
そして試飲の時間帯は、一日中働いた後。
そんなクタクタな状況で
「うまい!」
と思うビールを市場に出すことに変更した。
その結果、
「アサヒスーパードライ」
という商品が開発され、
市場に商品として投下され、
爆発的大ヒットを生むことになった。
「24時間365日ベストコンディション」
というのは、理想的かもしれないけれど
実際は、そういう人は稀だろう。
少なくとも、私なんかは
ベストコンディションである時の方が
圧倒的に少ない(笑)
だから、
全ての状況が揃ったベストコンディションの時に
最高のパフォーマンスを出せるものも
たしかに魅力的だけれど、
ベストコンディションじゃない時にこそ
真価を発揮するようなもの、こと、人が
より「本物」なのかもしれないね。
ブルース・リーは、
自分が不利な体勢でも、最高のパンチを放つ
訓練をした。
フィギュアスケートの高橋大輔選手は、
ジャンプに失敗した後の立てなおし方を
徹底的に練習した。
自分が最高に恵まれている状況ではない時にも
最高のパフォーマンスが出せる彼らだからこそ、
彼らは「本物」になったのかもしれないね。
私たちを取り巻く環境は、仕事上であれ、家庭であれ、
健康であれ、お金であれ、人間関係であれ、時間であれ、
いつもベストとは言えないことが多いよね。
でも、その中で繰り出される頑張りの中にこそ、
「本物」として、光輝ける素養が
生まれるのかもしれない。
今日も、良い日でありますように。
ではでは。