先日、とある業界で大成功をおさめた老紳士と
話をする機会があった。
その方は、クセのある人物ではあるのだけれど、
巨万の富を得ているのはもちろん、
業界の内外にも幅広い人脈を作っている人物だ。
すでに現役を引退していてもいい年齢.
なのにも関わらず、精力的に活動しているため、
見た目も相当若い。
そんな方と出会い、話すチャンスがあったので、
その方に、
「今まで大切にしてきたことは何ですか？」
と、質問をしてみた。
すると、その老紳士は、こう答えた。
「私は、常に引っ越すことを考えてきた。
それも、同じマンション内で引っ越すと
心に誓って頑張ってきただけだよ」
私が、どういう意味かを はかりかねていると、
その人は「もちろん、たとえ話だけれどね」
と言って、こう続けた。
「世の中には、“業界”“職種”という
高層マンションがある。いくつもある。
それこそ、職種の数と同じ数のマンションがある。
どの人でも、ある程度の知識や技術があれば
ある程度、どの高層マンションに入るかを選べる。
ただし、どの高層マンションに入るにしても、
はじめは低層階にしか入れない。
高層階に入るためには、その人の
知識、技術、人間的要素などが上がらないと
いけないんだ」
どうやら「高層マンション」というのは、
様々な業界、職種の比喩のようだった。
紳士は、話を続ける。
「うまく行かない人に良くあるパターンは２つ。
ひとつは、低層階に甘んじてしまうパターン。
もうひとつは、次々と別のマンションに
引っ越してしまうパターンだ」
「低層階に甘んじてしまう人は、
自分の努力が足りないのに、
“車の騒音がうるさい”とか、
“いい景色が見えない”と文句を言う」
「文句を言っているだけで、
上の世界があることすら、忘れてしまう」
「次々とマンション（つまり業界）を
移ってしまう人は、
“こっちのマンションなら良いに違いない”
と期待して、どんどん引っ越す」
「しかし、その期待は裏切られる。
多少は違うかもしれないが、
結局は、マンションの低層階なのは
変わりがないからだ」
なるほど、そんな比喩もあるのか。
と、私が興味深く聞いていると、老紳士は
「ここからが、大切だ」
と、念を押してから、話を続けた。
「私は、同じマンション（業界）の中で、
常に上に行くことを望んだ。
そして、自分の知識、技術、人間力を高めて
チャンスがあるたびに１階ずつ
マンションの上の階に“引っ越して”いった」
「引っ越すたびに。。。つまり上の階に行けば行くほど
目の前に広がる風景は変わっていった」
「そして、上の階に行けばいくほど、１部屋あたりの
部屋は広くなり、当然部屋数は減っていく。
つまり、同じフロアに住んでいる人は
少なくなっていったから、
それぞれが出会うことは、難しくなくなっていった」
「気づけば、業界と言う高層マンションの
最上階に登りつめていたようで、
同じフロアに住んでいる人は数人になっていた」
「そして、別の高層マンション（業界）の
最上階に住んでいる人たちとも
連絡が取れるようになっていった」
「人脈を広げたのではなく、
別の高層マンションの最上階に住む者同士が
同じような景色を見ている人たちと話したいと
思っただけなんだよ」
「低層階に住む人が、喧騒を見ている時、
高層階に住む人たちと、空に広がる花火を見ていた、
という訳さ」
個人的には、「上」「下」という
比喩表現が適切なのか？
また、その老紳士が言っている事すべてが
正しいことなのか？
それは、正直よくわからない。
ただ、ヒントになることは
色々と教えてくれたなぁ、と思うんだよね。
私なんかはつい、自分の世界観だけで
ものごとを見てしまう。
また、ちょっと大変なことがあると、つい
「他では、もっと楽できるかも」
なんて言う誘惑に、心が惑わされたりもする。
でも、世界は私が思っている何倍、何十倍も広いし、
他のところに行ったとしても、
自分自身が変わらない限り、楽なことはない。
自分の今いる場所で、
世界観を広げながら頑張ることしか
できないんだなぁ、と思った次第だよ。
今回の老紳士の話、
あなたには、どう響いたかな？
ではでは。