今日はクリスマス・イブだね。
恋人と過ごしたり、
家族と過ごしたりする人もいるだろうし、
「今日も仕事だよ」という人や、
「今年こそ、クリスマスが中止になれば良かったのに」
と残念がっている人など、様々だろう。
そんな中、クリスマス、サンタクロースに
関係のあるエピソードをひとつ。
私の学生時代の恩師の一人に
とてもロマンチストな物理学者がいた。
当時でもすでに初老の男性だったんだけれど、
授業を始める前に音楽をかけたり、
物理学者なのに、絵本を手がけたりする
とてもユニークな人だった。
(当然のごとく、女生徒からは
べらぼうにモテていた)
その恩師が、ある時授業の中で
「サンタクロースは、いるか?」
という問いを、授業に出ている
生徒に向かって質問した。
聞かれた生徒は、口々に
「いる」
とか、
「いない」
とか、自分の意見を言ったんだよね。
そして、ひととおり生徒の意見を聞いた後、
その物理学者が口を開いた。
「サンタクロースは、存在します。
物理学上でも、証明できます」
話を聞いていた生徒(もちろん私も含む)が
あっけにとられている間に、物理学者は、
「12月24日から25日にかけて、
プレゼントを配れる時間をx時間とします」
「プレゼントがもらえる子供たちの人口は、
世界の人口からと、年齢別の推移から
○億○千万人と推測することが出来ます」
「プレゼントを届ける家から家への移動距離を
平均△メートルとした時、トナカイの
スピードは、分速□kmに達します…」
と、私には到底理解できない物理学の式を
黒板にびっしり書いていったんだよね。
そして、
全ての計算式を書き終わった後、
「…以上から、サンタクロースは存在する。
しかし、人間の目には見えない。
ということが証明されるわけです」
と締めくくり、その後ニヤリと笑って
こう続けた。
「あなたたちが、サンタクロースを
信じるか信じないかは、どちらでもいい。
ただ、いつか子供たちにサンタクロースが
いるかいないかを聞かれた時には、
自分の言葉で、それを説明できる大人に
なっていてもらいたい。
それが、物理学でもいいし、文学でもいい。
科学でもいいし、芸術でもいい。
とにかく、あいまいにお茶を濁すのではなく
子供たちの疑問に正面から向き合って、
ちゃんと答えられる大人になってほしい」
…あれから、長い年月が経ち、
年齢的には「大人」と言われる人間になった。
でも、まだあの物理学者の言うところの
「大人」になれたかどうかは、
正直、あんまり自信がないんだよね。
もっと素敵な大人になれますように。
そして、そんな大人たちのもとにも、
サンタクロースが奇跡を運んでくれることを願って。
メリー・クリスマス。