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『せいくらべ』

彼女は、ソファーに寝転がり、
最近なにげなく買った神話の本を読みながら、
こうつぶやいた。
 
 
「神様同士って、けっこういがみ合ったり
 競ったり戦ったりしているのね。
 
 もう、お互いに神様なんだから、
 いがみ合わなくたっていいじゃない」
 
 
彼女からすれば、
欲しい物を全て手に入れている神様同士が
いがみ合っているのは、滑稽にしか見えない。
 
 
「もう、それ以上、何を望むっていうのよ」
 
 
 
彼女は、神話の世界に感情移入している自分自身に
少しバカバカしくなりながら、
そのままウトウトとまどろんでいってしまった。
 
 
 
 
 
 
 
彼女は、夢を見ていた。
 
 
 
 
夢の世界では、なぜか一匹のアリが
彼女に向かって、何かを訴えかけてきた。
 
 
彼女の足元で、小さな小さなアリは
声を張り上げる。
 
 
「聞いてください。
 私と同じ時に生まれた兄弟が、もうひどいんです!
 
 私がせっかく見つけた、道路に落ちていたアメ玉を
 自分の手柄にしちゃうんです!
 
 いつもいつもあいつは、私の努力をかっさらって
 行くんです。
 
 ひどいと思いませんか!?」
 
 
 
彼女は「変な夢だな」と思いつつも、
足元のアリに向かって、こう返事をした。
 
 
 
「そんな小さなこと、どうでもいいじゃない。
 
 せっかく一緒に生まれたんだったら、
 みんなで仲良くアメ玉をなめればいいじゃない?
 
 あなたが見つけようが、他のアリが見つけようが、
 そんなの大した違いはないわ。
 
 そんなことで悩んでいるなんて、おかしなアリさんね」
 
 
 
アリは、彼女の言葉を聞くと、
 
 
「わかってもらえないんですね」
 
 
と、少し悲しそうに彼女の足元から去って行った。
 
 
 
 
 
 
 
すると今度は、そばにあった木が
彼女に向かって話しかけてきた。
 
 
「ちょっとお嬢さん。
 私のとなりにいる、あの木を見てごらんなさい。
 
 いいですよねぇ、あの枝ぶり。
 
 それに比べて、私のこの枝と言ったら、
 恰好悪くて仕方がない。
 
 
 私も、あんな風な枝ぶりだったら、
 もっと幸せだと思うんですが、どう思いますか?」
 
 
 
彼女は、呆れながら木に向かって話した。
 
 
「そう?
 私には、どっちもどっちに見えるけれど?
 
 あなたも、あなたのとなりの木も、
 そんな大して変わらないわ。
 
 どうせ比べるんなら、同じような木じゃなくて、
 もっともっと立派な木とか、
 動き回れる動物とかと比べたらどう?」
 
 
彼女にそう言われると、
 
 
「そんなものでしょうか。。。。」
 
 
と、木は黙りこくってしまった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あら、いつの間にか寝ちゃっていたわ!」
 
 
彼女はソファーの上で軽くのびをすると、
 
 
「それにしても、変な夢だったわね」
 
 
と、今見た夢を思い出しながら、
洗面台へと向かった。
 
 
 
 
彼女は洗面台の鏡をのぞき込みながら、
ため息をついた。
 
 
「あーあ。
 私も二重まぶただったらよかったのに。
 私のまわりにいる子は、たいてい二重まぶた。
 
 みんな、ずるい。
 私も、二重まぶただったら、もっともっと
 幸せになれるのに」
 
 
彼女はそう言って顔を洗い、精一杯のお化粧をすると、
たくさんの物があふれている彼女の部屋から
出かけて行った。
 
 

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