その昔、ちょっとした兵法オタクだった。
兵法——戦争での勝ち方を説いた書物で、
有名なのは『孫子』とか『呉子』とかかな?
あとは『兵法三十六計』も有名だと思う。
兵法書を読んだことがなくても、
「三十六計逃げるに如かず」
という言葉は、知っている人が多いんじゃないかな?
で、
その『兵法三十六計』の中に、
「遠交近攻」
という考え方がある。
文字通りの意味で、
遠くの相手と同盟を組み、近くの相手を攻める。
という考え方。
近くの国と同盟を結んでいても、
自分の領土は広がらない。
なので、自分の領土を広げるためには、
近くの相手と戦う必要がある。
そして、その戦いを有利に進めるために
自分の領土と遠く離れた国とは
同盟を結んでおくといい。
という考え方だ。
この考え方は、ビジネスの分野でもよく応用されていて、
「近くのライバル店はつぶす覚悟で、
遠くの繁盛店とは仲良くして、良いところを取り入れる」
みたいなのが、ひと昔前のビジネス書には
よく書いてあった。
ところが。
業種にもよるんだろうけれど、
最近繁盛している業界では、この「遠交近攻」が
当てはまらないように見えるところも多い。
ネット起業では、同じような情報を扱っている人同士が
お客様を「紹介し合う」形が流行しているし、
セミナー業界でも、いい内容を伝えているのであれば
他のセミナーをバンバン紹介する。
「近くの似たようなお店をつぶすつもり」
でやっていたら、ラーメン博物館は成り立たないし、
コンビニエンスストアですら、流通に関しては
「近くのコンビニには、同じトラックで運ぶ」
という流れができている。
「遠交近攻」の観点からすると、「?」という現象が
起きているんだよね。
「ぜんぜん、近くを攻めてないじゃん?」
という印象を、パッと見受けてしまう。
じゃあ、もう「遠交近攻」の考え方は古いのか?
現代では、使えない戦術なのか?
と、考えると、実はそうでもないぞ、
という事に気がついた。
たぶん、情報インフラのおかげで、
「世界が広くなった」
とも言えるし、
「世界が狭くなった」
とも言えるので、この「遠交近攻」も
視点を変えて考える必要がでてきているのかもしれない。
まず、
「世界は広くなった」
という考え方から。
昔は「近く」と言うと、せいぜい歩ける範囲内。
「遠く」と言っても、まぁ日本全国くらいを
指すことが多かった。
なので、
「歩ける範囲内のライバル店と戦って、
日本中の良いお店と仲良くする」
くらいでよかった。
しかし、今はもっと「世界」が広い。
日本全国のものが、自宅でワンクリックで注文でき、
早ければ、次の日には手に入る。
それが、当たり前の世の中だ。
そんな中で、
「歩ける範囲内のライバルと戦おう!」
なんてしている時点で、ちょっと時代遅れだ。
もう、歩ける範囲内、もしくはすぐに連絡が出来る人のことは
「ライバル」ではなく「自国内の仲間」
くらいに考えないと、衰退が目に見えている。
今は、同じ業界の人は「自国内の仲間」。
そして、「近くの戦うべきライバル」は、
他業種で似たようなことをやっている所なのかもしれない。
コンビニのライバルは、
ファーストフード店だったり、デパ地下だったりするわけで、
同じコンビニ同士で争っている場合じゃない。
そして、海外の素晴らしい知恵を吸収していくところが
今後も伸びていく「遠交近攻」戦略なのかもしれないね。
そして。
「世界が狭くなった」というのも、事実だ。
先ほど言ったように、今は自宅にいながら
様々な情報が手に入る時代だ。
日本に居ながら、
日本の反対側にある国に置かれている自動販売機の
売上げ個数ですら分かる時代。
「世界が狭くなった」
と言っても、差支えないだろう。
そんな時代。
「遠交近攻」は、どこで発生するのか?
逆説的だけれど、
「戦うべき近いもの」
は、もはや「自分自身」くらいしかいないのかもしれない。
自分以外のものとは、「遠交」する。
同盟を結ぶ、学ぶべき存在なのかもしれない。
そんなことに気が付いている人が多くなってきているから、
今はコンビニでも自己啓発系の本が売られていたりするのかも
しれないね。
もはや廃れてしまったという風に見える考え方も、
見方を変えると、また別の本質を教えてくれるかもしれない。
あなたの知っている
「もう、カビの生えたような古い考え方」
も、別の視点から見てみるのも、おもしろいかもしれないね。
ではでは。