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『宇宙からの侵略者』

「ふぅ、もうお腹いっぱいだ」
 
今日も召使いから運ばれてきた食事を食べ終わると、
私はソファに、ごろりと寝転んだ。
 
召使いは、私が何か用事を言いつけるのではないかと
しばらく様子をうかがっていたが、
私がゆっくりと休んでいるのを見て、
静かに部屋から出て行った。
 
私が呼べば、すぐに隣室から飛んでくるだろうが
今日は、もう呼ぶこともないだろう。
 
 
「この時間は、実にいい」
 
あたたかな部屋で少しウトウトとしながら
私はつぶやいた。
 
 
変化のない、平凡な毎日。
 
特に仕事をする必要もなく、
気ままに暮らしていける。
 
用事があれば、召使いがすべてを
やってくれる。
 
 
他から見れば、さぞや恵まれているのかもしれないが
生まれてからずっとこの環境なのだから
私からすれば、退屈な日常だ。
 
 
「なにか、あっと驚くようなことがあっても
 よいのだが」
 
まどろみながらそんなことを考え、
窓越しに、ふと外の風景に目をやる。
 
 
すると。
 
 
「ん。。。?
 なんだ、あの光は。。。?」
 
夜空のかなたから、一筋の光が
急激にこちらに向かってくる。
 
その光はスピードをゆるめることなく、
一気にこの家まで向かってくる。
 
 
「おい!」
 
と、召使いを呼ぶよりも先に、
その光は一瞬にして家じゅうを包み込んでしまった。
 
私は、そのあまりのまぶしさに
思わず目をつぶった。
 
 
—-
 
 
気が付くと、あたりの様子がおかしい。
 
先ほどまで体を預けていたソファはなく、
まわりは真っ白で無機質な壁しかなかった。
 
 
そして、私の目の前には、
今まで見たこともないような、
不思議な生物が数人、立っていた。
 
 
一見すると普通の人間のようにも見えるが
目が異様に大きく、つりあがっている。
耳もとがり、鼻もまがっている。
 
 
「ようこそ。」
 
その生物は、不敵な笑みを浮かべながら
私に話しかけてきた。
 
「なんだ?お前たちは?」
 
私が警戒しつつ聴くと、
 
「ふむ、自動翻訳機は良好に作用しているようだな。
 私たちは、遠い星から植民地を探しに来たものだ。
 お前たちからすれば、宇宙からの侵略者、ということになる」
 
と静かに話し始めた。
 
 
宇宙からの侵略者だって?
先ほど、あっと驚くようなことを望んではみたが、
このような事態になるとは。
 
 
「私をどうするつもりだ?」
 
おそるおそる宇宙人たちに聞くと、宇宙人の一人は、
 
「お前は、サンプルだ。
 私たちは、本格的な侵略をする前に、
 植民地にする星を支配している個体を、何体か捕まえる。
 
 そして、その星の文明度や、
 私たちの攻撃への抵抗力などを調査するのだ。
 
 大丈夫だ。サンプルと言っても
 お前の脳波から直接データを集積するので
 痛いことも、なにもない」
 
と、すらすらと答えた。
 
 
まさか、私が支配者層だということで
こんなことに巻き込まれるとは、思わなかった。
 
いつもなら困ったことがあれば
召使いに命じていればよかったのだが、
彼はどこにもいない。
 
 
また、宇宙人たちに抵抗しようと思っても無駄だろう。
 
宇宙人たちは、特に私を尋問することもなく、
見たこともないような機械で、
ただただ私の脳内からデータを取り出し始めた。
 
 
私は、ただ茫然と宇宙人たちのなすがままに
従うしかなかった。
 
 

 
 
「準備は完了した」
 
宇宙人はそう言うと、つりあがった目を細めて笑った。
 
「お前の星ていどならば、先発隊である私たちだけで十分だ。
 ろくな武器もなければ、使える道具もほとんどない。
 
 しかも、お前たちは、協力するということをしない。
 一体一体が、自分のことだけを考えて生きている。
 
 よくもまぁ、こんな植民地として優良な星が
 宇宙の片隅にあったものだ」
 
宇宙人はそう言い終わると、
地球に向けての攻撃を開始するために、
私のもとから離れていった。
 
 

 
 
宇宙人の攻撃がはじまった。
 
データを充分取り終えていた宇宙人たちにとって、
実際の攻撃は、一瞬にして終了するはずだった。
 
 
しかし。
 
 
地球からの反撃は、宇宙人たちが予測していたものを
はるかに上回っていた。
 
事前のデータからは、どう考えても
使いこなせるはずもない武器を使い、
宇宙人たちの攻撃を見事に迎撃していった。
 
そして何より、支配者層から取ったデータからは
到底考えもつかなかったチームワークを発揮し、
一丸となって宇宙人を撃退したのだ。
 
 
「おかしい。。。
 まさか、こんな反撃を喰らうとは。。。」
 
「なんだ、、、
 お前たちの召使いは、なぜこんなにも優秀なのだ。。?」
 
 
どうやら、私の召使いたちが
宇宙人の予想以上の働きをしているようだ。
 
 
宇宙人は私の目の前で、悔しそうに倒れ込んだ。
 
 
 

 
 
宇宙からの侵略を見事食い止めた地球人たちは
宇宙人の乗っていた宇宙船の中へと潜入した。
 
 
「どうだ?何か見つかったか?」
 
宇宙船に潜入した隊員に、基地からの無線が入った。
 
 
「はい、これからの調査が必要かと思いますが、
 今まで見たこともないような、すぐれたものが並んでいるようです。
 しかし、それ以外に、とても気になることが。。。」
 
「なんだ?何があったんだ?」
 
 
隊員は不思議そうに、基地にいる隊長に告げた。
 
 
「どう見ても地球にいるネコが、
 宇宙船の中に何匹もいます。
 
 宇宙人が攻撃の前にさらったものと思われますが、
 なぜ、こんなにもたくさんのネコを
 さらったのでしょうか。。。?」
 
 

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