「クフフ、、、残念だったなァ、浦島ァ!」
その箱型のモニターには
高笑いをする女性の姿が映っていた。
かつて愛した女性。
男は彼女を乙姫と呼んでいた。
「お前は ” 英雄候補 堕落計画 ” により、
老人になるまで捕獲されていたんだよォ。
亀を助ける気質は英雄だったが、
おめおめと誘惑に乗ったのが運のツキだったなァ」
———-英雄候補 堕落計画。
正義の心を持ち、
弱きものを放っておけない気質の人間を、
老衰するまで軟禁する。
果てしない長期に及ぶ計画のようではあるが
リューグー星人の寿命からすれば
ほんの一時に過ぎない。
血を流さず、じっくりと地球を侵略する。
そのためであれば、たかが数十年の時間など
取るに足らないコストだった。
「何か言いたいことはあるか?
醜く老いさらばえ、お前を知る者もなく、
さらには元の場所にも帰れない。。。
私への恨み言くらいは、少し聞いてやるぞ?」
乙姫、、、、
いや「堕姫(Oto-Hime)」であった ” それ ” は、
浦島に対して悪意ある憐れみをみせた。
「、、、、絶望するとでも?」
「なんだと?」
「オレが、絶望するとでも思っているのか?」
浦島がそう言うと、
浦島を中心として辺りが光り始めた。
「なッ、、、、何ィィィ?????」
「オレがこの世からいなくなろうともっ!
正義の光はっ!消えない!!」
「お前たちは、三つミスを犯した。
ひとつ、オレが世を去る前に地上に戻したこと。
ふたつ、虚構だろうがオレに夢のような世界を見せたこと」
「そっ、、、、それは計画のうち、、、、!!!!」
「そして、みっつ。
オレの、、、オレの正義の魂は
まだ真っ赤に燃えていることを見抜けなかったことだァァァァ!!!!」
———-それから悠久の時が過ぎた。
地球は、まだ人類の手に在った。
「正しい行いをしていれば、
誰かが見ていて、夢のような生活ができる。
勇気をもって、正しく行きましょう」
「浦島太郎は、決して開けてはならないと言われていた
玉手箱を開けてしまったから、残念な最後を迎えた。
言いつけは、守りましょうね」
老いた浦島太郎が晩年、
自分が愚か者と後世に伝えられようとも、
一部を脚色して語り続けた話が、
今もなお、「正しい心」を育て続けている。
その勇気が今日もまた、
「英雄候補」を生み続けているのだ。
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いやぁ、その時に書きたいものを書くって、楽しいですね(笑)