世界一、尻もちをつく女。
最近、友達が
「知識のアウトプット会」
を開催し、そこにお邪魔していた。
参加者は6名で、参加した全員が
すでにビジネスで成果を上げている人たちだ。
普通、実践をしている人たちが集まると、
たいていは
「○○の解決法」
とか、
「こういうケースでは、こうする」
といった、テクニックのシェアに偏る傾向があるんだけれど、
この集まりでは、違う。
「偉大な経営者は、どのような在り方だったか」
とか、
「群を抜いて素晴らしい成果を出した人々は
どのような人物であったのか」
といった、哲学的なことをシェアする。
そして、またしばらく経ってから会うと、
前回聞いた哲学を、自分のビジネスで実践して、
またそれをシェアする。
というサイクルで行なわれている。
完全に
「実践する哲学集団」
なんだよね。
この集団では、私は歳年長であるにもかかわらず、
他のメンバーに圧倒されて
教えてもらってばっかりいる状態。
でも、そんな所にお邪魔させてもらえることに
本当に感謝しているんだよね。
さてさて。
そんな「実践する哲学集団」のアウトプット会では
今回も実にたくさんの生きている知恵を
受け取らせてもらった。
今回の記事では、受け取らせてもらった知恵の中で、
比較的全員に響くような話をひとつ
シェアしたいと思う。
世界一、尻もちをつく女性の話だ。
女子フィギュアスケートの世界は
華麗なジャンプとスケーティングで観客を魅了し、
その技術を競う競技だ。
当たり前の話だが、競技中に尻もちをつくのは
大きな減点となる。
競技の本番ではもちろんのこと、
選手は練習中でも
「できるかぎり華麗に」
を目指しているし、
尻もちをつくなんてことは、
練習中でも避けたいはずだ。
しかし、
その選手の中で、
練習中、もっとも尻もちをついている女性がいた。
その選手は、ジャンプすれば尻もちをつき、
スケーティングでも尻もちをついた。
来る日も、来る日も、
尻もちをつき続けた。
他の選手から見たら
「なんであんなに下手なんだろう?」
「どうして尻もちばっかりつくのかしら?」
と思われていたかもしれない。
それでも毎日、彼女は必死に練習し、
そして尻もちをつきつづけた。
だが。
彼女は練習中、尻もちをつき続けながらも
彼女の目指していた大きな舞台に立つことが出来た。
そして、そこで最高の演技をした。
その最高の演技は、見ていたものを虜にし、
拍手喝采の中、最高の得点をマークした。
彼女の目指していた大きな舞台、それはオリンピック。
そこで彼女は、金メダルを手に入れたのだ。
そう。
彼女の名前は、荒川静香。
彼女は、だてに尻もちをついていたのではない。
尻もちをつかないレベルのジャンプやスケーティングは
彼女はとっくにマスターしていたのだ。
でも、それではオリンピックで金メダルを取ることはできない。
彼女以外の選手も出来ることをやっても、
金メダルには手が届かないのだ。
だから、彼女は
「誰もできないジャンプ」
「誰もやったことのないスケーティング」
を練習し続けたのだ。
誰もできないことなのだから、
荒川選手も、当然失敗する。
尻もちを、つき続ける。
それでも、彼女は「誰もできないジャンプ」を目指して、
来る日も来る日も練習し続けたのだ。
そして、
オリンピックという大舞台で、
誰もなしえなかった見事な演技を
完璧に滑り切ったのだ。
私は、荒川静香選手のような境地に至ったことはないので、
彼女を語ることそのものが、おこがましいことだと思う。
その上で、彼女の姿勢から謙虚に学ばせてもらいたい。
誰よりも失敗しても、いい。
誰よりもかっこ悪くても、ぜんぜんかまわない。
それが、自分の目指すところに近づくのであれば
それでいい。
そんな風に思う。
そして。
それは、彼女が金メダルを取ったから、ではない。
もしかしたら、アクシデントがあれば
荒川選手だって、金メダルをとれなかったかもしれない。
知れないし、
同じ舞台に立って、荒川選手に敗れた選手だって、
荒川選手と同じように、毎日尻もちをつきながら
「誰も見たことのない境地」
を目指していたかもしれない。
だから、結果はどうでもいい。
とまでは言わないが、二の次、三の次の話だ。
「誰も見たことのない世界を目指す」
「そのために、毎日、尻もちをつき続ける」
そんな姿勢をこそ、学べればいいなぁ、と思うんだよね。
私自身が、今現在、
「すでに飛べるジャンプ」
だけで毎日を送っていることに、
いささかの恥ずかしさを覚えながら。
ではでは。