二人の女性が、ため息まじりに
井戸端会議に興じていた。
「あら、だいぶお疲れのご様子ねぇ」
一方の女性が気遣うように声をかけると
もう一方の女性は、疲れた頬笑みを浮かべながら
こう答えた。
「ええ、まぁ、ちょっとねー。
うちの子たち、かわいいのはいいのだけれど、
本当に手がかかって。。。
小さい時は、泣いてばかりで何をして欲しいのか
わからなかったし、
言葉をしゃべったらしゃべったで、
ささいな事で、本当にケンカばかり。
この前も、『これは僕のイスだ!』なんてことで
ポカスカしだすし。。。」
すると、もう一方の女性も、
苦笑いをしながら、こう話しだした。
「うちも同じようなものよ~。
私の顔を見れば『金くれ、金くれ』って。
で、こっちが
『お金をあげてもいいけれど、
しなきゃいけないことは、ちゃんとしてね』
って、ちょっと何かやってもらうとすると、
すぐにむくれるし。
お金をあげても『ありがとう』のひと言もないしね」
二人は顔を見合わせて「どこも同じよねー」と笑いあった。
「せめて、何が欲しいのかを、しっかり伝えてくれないと
こっちも困るのよねぇ~。
『これじゃない』『こうでもない』って、
じゃあ、どうすればいいの?って感じ」
「もちろん、お礼言われるために
世話やいているわけじゃないけれど、
ちょっとでも感謝してくれないと、ねぇ?」
「やってあげたことが良かったのか、
そうでもなかったのか、分からないことも多くない?
なんか
『これはたしかに欲しかったんだけれど、
ちょっと違うんだよなー』
みたいな反応されると、ちょっとがっかりしちゃう」
「たまには、全力で『ありがとう!!』って言ってくれれば
こっちだって、もっと喜んでほしいから
はりきっちゃうのにねぇ~」
二人は、ひとしきり言いたい事を言い合うと、
「大変なのは、どこも同じなんだわ」と、
ほっと胸をなでおろした。
「で、さっきの『これは僕のイスだ!』っていうケンカ、
結局どうなったの?」
「ああ、あれねー。
結局、いつものとおり『解散、総選挙』って流れになって
どっちがイスにふさわしいかっていうアピール合戦。
私から見ると、どっちもどんぐりの背比べ
なんだけれどね~」
話を聞くと、一方の女性は「やっぱりねー」と
肩をすくめた。
「まぁ、そうよねー。
長年世話を焼いていても、
結局あんまり進歩はしてくれないのよねー。
ところでそちらのお子さん、
いま何人いらっしゃるんでしたっけ?」
聞かれた女性は、ちょっと考えてから、
「えーっと、何人くらいかしら。
あなたのところよりも少ないから、私なんかまだ楽よ。
たしか、10億人くらいだったかしら」
と答えた。
もう一方の女性は
「たしかにうちの方が多いけれど、
そこまでいったら、何人でも大変よー。
うちは、だいたい30~40億人くらいかしらね~」
二人はあらためて「お互い大変よねー」と
笑いあって、どちらからともなく井戸端会議を終わらせた。
「じゃあ、そろそろ戻らなきゃ。
またね、権力の女神さん」
「ありがとう、またおしゃべりしましょうね。
ごきげんよう、富の女神さん」