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自尊心の奴隷。

私の親友に、映画業界で活躍していた人がいる。
 
現在その人は、映画という業界に縛られず
さまざまなビジネスプロジェクトに携わる
 
「偉大なる仕掛け人」
 
として活躍中だ。
 
 
 
その彼が以前から語ってくれるのが
 
「自尊心の奴隷」
 
という話。
 
 
 
それまでは、あまりパッとしなかった俳優さんが
ヒット作に恵まれて脚光を浴びるようになると、
 
「これが、私の実力なんだ」
 
「私は、人からチヤホヤされるのが当然の
 選ばれた人間なんだ」
 
という、自己重要感バリバリの人間になる人がいるそうだ。
 
 
 
それが彼の言うところの「自尊心の奴隷」。
 
 
 
自分の正しさを信じて疑わない。
 
人への感謝が薄れる、なくなる。
 
誰かに何かをやってもらって当然。
 
人を見て自分の態度を変える。
 
大切に扱われないと、スネて傍若無人となる。
 
 
 
それまでは、どちらかと言えば謙虚な人だったのに、
一度の成功でのぼせ上がり、
周囲からの評価を下げてしまう。
 
 
もちろん、それには
 
チヤホヤしだす周囲があったり、
 
今までなかったような誘惑があったり、
 
「ステージが上」の人との交流があったりと、
 
本人のあずかり知らぬところでの動きがあったりもするのだが、
そこで、誘惑にからめとられるかどうかは、本人次第だ。
 
 
 
誘惑に負け、不遜な人に変貌してしまった人は、
いつのまにか自分を
 
「本人の自尊心」
 
を支配者とする奴隷に成り下がらせてしまっているわけだ。
 
 
 
自尊心という独裁者に完全に支配され、
普段の日常を
「自尊心将軍さま」を満足させるためだけに捧げる。
 
 
自尊心さまがもしお気に召さないことがあると、
本人は自分の中に居座る「将軍さま」が満足するまで
とんでもない行動をとり続ける。
 
そして、それが毎日毎日 続くわけだ。
 
  
 
 
私の親友は映画業界で、そんな
 
「自尊心の奴隷」
 
に成り下がった人たちを、たくさん見てきた。
 
 
 
そして、
 
「もちろん、映画業界に限った話ではないけどね」
 
と、淡々と、しかし口元を少しニヤリとさせて続ける。
 
 
 
そう。
 
 
映画業界でも、
 
ビジネス業界でも、
 
ファッション業界でも、
 
出版業界でも、
 
小さなコミュニティでも、
 
 
どんな業界でも、どんな場所でも、
自尊心の奴隷になる罠は待ち構えていて、
 
 
小さな成功を果たした人に、
 
「お前は特別なんだ」
 
と、エゴの悪魔が耳元でささやき続ける。
 
 
 
親友である彼は、今も昔も
自分がプロデュースしている人の成功と幸せを願っている。
 
それと同時に、
プロデュースした人が「自尊心の奴隷」に
堕ちないよう、細心の注意を払っている。
 
それは何より、プロデュースしている人を
心から尊敬しているからこそだ。
 
 
 
「あの人には、あの優しい彼のまま、
 大きなステージで活躍してほしいんだ」
 
 
 
飲んだ帰りに、そんな風につぶやく彼の横顔には、
今までの悔しさと、プロデュースした人の未来を願う
真剣さがうかがわれた。
 
 
 
そんな彼が言うには、
「自尊心の奴隷」に成り下がらない方法は
究極的にはひとつらしい。
 
 
そのひとつの分岐点とは、
 
「より大きな世界を見ているかどうか?」
 
というポイント。
 
 
井の中の蛙、サル山のボスで終わるのか?
 
それとも、今回の成功を
大海を目指し、ジャングルを見るチャンスととらえるのか?
 
 
大きな世界にフォーカスが行っていれば
自尊心の奴隷になることはない。
 
 
仮に、大きなステージを目指さなかったとしても、
 
 
「こことは違う世界がある」
 
「今の私よりも必死にチャレンジしている人がいる」
 
 
ということが腹に落ちていれば、
不遜な態度など取れない。取りようがない。
 
 
 
さて。
 
 
 
自分がやってきたことに誇りを持つことは大事。
 
しかし、そのプライドは
外側を照らす光として使った方がいい。
 
自分を照らすスポットライトにしてしまったら、
その陰にエゴの悪魔を
住まわせることになってしまうだろう。
 
 
 
私自身は、「自尊心の奴隷」になるような成功を
まだ収めていないけれど、
 
 
もし私が
 
 
「フハハハハ!時よ止まれ!ワタシは美しい!」
 
 
とか言い出したら、なんとかしてください。
 
 
 
「自尊心の奴隷」。
 
それはきっと、未来の可能性という時間と
広がるはずの世界という空間の
両方を放棄した者の姿だろうから。
 
 
 
ではでは。

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