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『もの』

むかしむかし、あるところに
手に入れた人によって
どんな形にでもなる「もの」がありました。
 
 
 
ある人は、「もの」を手に入れて言いました。
「私は、これを武器として使う」。
 
すると、その「もの」は
みるみるうちに望まれた通りの武器となり、
多くの人を傷つける道具となりました。
 
使っている本人は、大して強くはなりませんでした。
 
 
 
 
ある人は、「もの」を手に入れて言いました。
「私は、これを免罪符として使う」。
 
そうして、その人は「もの」を見せつけながら
自分の怠惰や傍若無人なふるまいを
「もの」によって許されようとしました。
 
使っている本人は、ますます身勝手になりました。
 
 
 
 
ある人は、「もの」を手に入れて言いました。
「私は、これでお金を手に入れる」。
 
すると、その「もの」は、
次々と人様からお金を吸い上げる
掃除機のような道具になりました。
 
使っている本人は、
ぜいたくをしながら孤独になってゆきました。
 
 
 
 
ある人は、「もの」を手に入れて言いました。
「私は、こんなものをたくさん集める」。
 
その人は、どんな形にでもなる「もの」を
せっせと集めることだけを続けました。
 
使っている本人は、なにも変わりませんでした。
 
 
 
 
ある人は、「もの」を手に入れて言いました。
「私は、これで人気者になる」。
 
すると、その「もの」は人から羨望を集める
スポットライトに変わりました。
 
使っている本人は、ますます強い光を求め続けました。
 
 
 
 
ある人は、「もの」を手に入れて言いました。
「私は、誰かのためにものを使う」。
 
すると、その「もの」を必要としている人が
助けを求めてくるようになりました。
 
使っている本人の気持ちは、わかりません。
 
 
 
 
ある人は、「もの」を手に入れて言いました。
 
いえ、問いかけました。
 
「あなたは、どう使われたいの?」
 
すると、その「もの」は、本来の姿を見せました。
その本来の姿は、常に変化しました。
 
「もの」に問いかけた本人は、
問いかけを続け、ものと共に生きました。
 
 
 
 
その「もの」の名前は。
 
そう。
 
 
「学び」、あるいは「経験」でした。
 
 

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