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道を極めた者のリアル

道を極めた者のリアル。
 
 
先日、友人の誘いで
天ぷら屋さんに行った。
 
 
その天ぷら屋さんは、
日本人のお客さんはもちろん、
海外からのファンも多く、
 
 
 
「こんな場所、普通わからない!」
 
「分かったとしても、ちょっと入るのに
 勇気がいるぞ、こりゃ!」
 
というような住宅街で
ひっそりと営んでいるにもかかわらず、
多くのお客さんが足しげく通う。
 
 
 
グルメたちのバイブルとも言える
レストランガイド「ミシュラン」にも
たびたび掲載を依頼されているが、
ご主人は、それを断り続けている。
 
 
 
 
天ぷらを揚げ続けて51年。
 
 
誰もが認める天ぷらに辿り着いた「道を極めた者」が、
天ぷらをひととおり揚げ終わったあと、
1回だけ受けたテレビの取材の話を、私たちに話をしてくれた。
 
 
 
 
 
 
「プロフェッショナルの仕事を収録しにくるやつらが、
 プロフェッショナルじゃない」
 
 
取材をした人たちは、いわゆる
「職人」のステレオタイプを映しだそうとする。
 
 
いわゆる「職人」とは?
 
 
天ぷら一筋で、他の事は一切興味がないような人間像。
 
道徳的で、禁欲的で、きまじめな人間像。
 
 
 
 
しかし、ご主人は違う。
 
 
天ぷら以外にも、色んな事に興味がある。
 
芸術や、文化にも興味がある。
  
女の子遊びもするし、タバコも吸う。
(タバコは、ちょっと衝撃だった)
 
 
道徳的とか、禁欲的という世界からは、
程遠い存在だ。
 
 
 
ご主人は話を続ける。
 
「天ぷらを来る日も来る日も揚げ続けて、
 タバコもオンナもなくて、やってられるか!」
 
 
「他の事も全部体験しているから、
 うまい天ぷらが揚げられるんだよ」
 
 
「遊びつくしているから
 お客さんの気持ちがわかるんだよ」
 
 
「うまい天ぷらが揚げるのは、男を磨くため。 
 男を磨くのは、その先にオンナが待ってるからだろ?」
 
 
 
そんな言葉たちを、天ぷらのようにカラッと言って、
 
 
「俺は、本当の姿をテレビに映してやろうと思って、
 普段は1日50本しか吸わないタバコを、
 その日は70本も吸ってやった」
 
 
と、笑った。
 
 
 
 
 
 
 
 

なんとなくだけれど、
「道を極めた者」に、
私たちは「あるべき姿」を期待しているのかもしれない。
 
 

でも、
 
 
実際は、
 
様々な思いを胸に秘めながら、
自分の選んだ道に関してだけは
怠ることなく精進している。
 
ということなんだろう。
 
 
 
「道を極めた人は、禁欲的」
 
という風に考える時、実は
その人そのものを見てはいない。
 
 
道を極めた人の中には、禁欲的な人もいるだろうし、
そうでない人もいるだろう。
 
派手に遊ぶ人もいるだろうし、
タバコを吸う人もいるだろうし、
色んな人がいるだろう。
 
 
考えてみれば、当たり前だ。
 
 
 
「人を見る」ということを、
普段は誰でもやっているのに、
その人に「肩書き」をつけた瞬間、人を見なくなる。
 
 
 
「道を極めた人は、禁欲的」
 
 
「身体障害者は、心やさしい」
 
 
「パソコンに詳しい人は、根が暗い」
 
 
「お金持ちは、悪い人」
 
 
「動物好きは、嘘をつかない」
 
 
などなど。
 
 
 
 
天ぷら屋のご主人には、
他にも色々と話を聞いたので、
また書かせてもらうと思うけれど、
 
「道を極めた者のリアル」
 
を、堂々と教えてくれたご主人に
まずは頭を下げたいと思う。
 
 
 
ではでは。
 

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