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『魔滅』

「魔滅」。
 
それは、この世に蔓延する
邪なる鬼を滅するために作りだされた神具。
 
 
食すれば人とは思えぬ力を発揮する事が出来、
投げれば鬼を打ち破る破魔の弾丸となる。
 
 
 
今日もここに、魔滅を手にした戦士がひとり。
 
まだ幼いものの、彼はすでに一人の戦士としての
悲しみと風格をまとっていた。
 
 
少年は、鬼により父をなくしていたのだ。
 
 
少年の父も、邪なる鬼を倒す戦士であったのだが、
鬼に命を奪われてしまったときく。
 
 
「父さん、、、今日こそ」
 
 
 
少年には、どうしても倒せない鬼が一匹いた。
 
 
赤く、隆々とした筋肉から繰り出される
金棒の一撃を避けるのだけで精一杯になってしまう。
 
 
しかし、今日こそは
最大の敵である鬼を打ち倒さんと、
彼は胸に闘志を秘めて、鬼の棲家までやってきたのだ。
 
 
 
 
「くらえっ!」
 
少年の放った魔滅を、すんでのところで鬼は避け、
巨体から金棒の一撃を繰り出す。
 
 
少年も鬼の攻撃をかいくぐり、
さらなる攻撃を繰り返す。
 
 
しかし、日頃の鍛錬を重ねてきたものの、
どうしても、この鬼には、あと一歩のところで
勝つことができない。
 
 
 
袋小路に追い詰められた少年の前に、
鬼が立ちはだかる。
 
 
  
(くっ。。。このままでは。。。)
 
 
少年は、手にしていた魔滅に、じっと眼を落とす。
 
 
この魔滅は、食すれば強靭な肉体を手に入れることができる。
 
 
しかし、自分の許容量を超えて摂取してはいけない、
という掟があった。
 
 
 
「しかし、、、勝つためだ!!」
 
 
少年は意を決して、手にしていた魔滅を、
一気に口に運ぼうとした。
 
 
 
その時。
 
 
 
鬼は金棒を振り捨て、少年の手から魔滅を奪った。
 
 
その行動は、少年からしても奇異な行動だった。
 
魔滅は、鬼にとっては触れるだけで破魔の効果を発揮する。
 
 
それを鬼も知っているはずなのに、
自ら魔滅に手を出したのだ。
 
 
「なぜ。。。?」
 
 
少年が呆気にとられている間もなく、 
鬼は、奪った魔滅から放たれる破魔の力にうめいた。
 
 
 
鬼のとった行動の理由は分からないが、
この千載一遇の機会を逃すわけにはいかない。
 
 
 
「今だ!」
 
 
少年は新しい魔滅を袋から取り出し、
一気に鬼に投げつけた。
 
 
「鬼破外!」
 
 
少年の手から放たれる魔滅は、
正確に邪なる鬼の魔力を削いでゆく。
 
 
鬼は大地に倒れ、魔力を失った体は
みるみるうちに衰えていった。
 
 
 
すると。そこには。
 
 
 
 
「父さんっ!!!!???」
 
 
 
少年が戦ってきた最強の鬼の正体。
 
 
それは、すでに鬼に打ち倒されてしまったと思っていた
父だったのだ。
 
 
 
「父さん。。。。なんで。。。。」
 
 
抑えきれぬ涙で顔を濡らしながら
少年は倒れた父に駆け寄った。
 
 
鬼であった父は、最後の命を振り絞って
少年の頭をなでながら、優しい目を向けた。
 
 
「私は、ある時、鬼との戦いに敗れそうになった時、
 掟を破って、許容量以上の魔滅を食べてしまったのだ。
 
 しかしそれは、安易に力を得ようとする心からの行動。
 すなわち、“ 魔 ”だったのだ。。。
 
 そこから、私は鬼へと姿が変わり、
 邪なる道を歩むことになってしまった」
 
 
ただ泣き続けている少年に
父は言葉を続けた。
 
 
「“魔”の誘惑に負け、鬼へと堕してしまったが、
 お前のことを忘れたわけではなかった。
 
 お前の成長を願い、私との戦いの中で
 お前に強くなってもらおうとした。
 
 。。。よく、ここまで成長したな」
 
 
鬼であった父が苦しそうに咳きこむと
少年は父の目を見ながら泣き崩れた。
 
 
「父さん!!!」
 
 
「これからも、お前の前には、
 様々な“魔”の誘惑があるだろう。
  
 それに負けるんじゃないぞ。
 お前なら、できる。
 父のようには、なるな」
 
 
そして、父は最後に
かすれた声で言った。
 
 
「いいな。。。。魔滅は、年の数までだ。。。
 
 食べ過ぎたら。。。。いけな。。。い。。。よ。。」
  
 
 
—–
 
 
ってなわけで、全国のお父さん、
鬼の役がんばってくださいw

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