昔話をナナメ視点で解釈してみよう!という
「ナナメから」シリーズ。今回は『カチカチ山』。
まずは、あらすじ。
むかしむかしあるところに爺さん婆さんが住んでいて
畑を荒らしていたタヌキを捕まえてタヌキ汁を作れと
婆さんに命じた爺さんが逆に婆汁を食わされて泣いた。
何もできない爺に代わってウサギがタヌキの背中に火をつけ
そこに唐辛子を塗り込み、最後は泥船を沈めて成敗しました。
というオハナシ。
まずみんなが普通に、最初に思うことは、
「これ、実写版でやってはいけないな」
ということだよな?(笑)
他の昔話もエグいシーンってあるけれど、
これほどホラー映像が満載なものって、なかなかない。
映画にしたら、絶対に終始薄暗い映像で、
『リング』とか『呪怨』とか『着信アリ』みたいな感じだぜ?
さらにスプラッター的なシーンもかなりあるから、
「日本映画の陰湿な怖さ×西洋映画の視覚的ホラー」
が融合した意欲作になるだろう(ならない)。
で、だ。
この作品の最大の謎は、
「なぜウサギは、爺さんの代わりに
タヌキを懲らしめようと決意したのか?」
じゃん?
畑を荒らしていたタヌキを爺さんが捕まえた ←わかる
捕まえたタヌキをタヌキ汁にしようとする ←まぁわかる
タヌキは婆さんを騙して脱走 ←わかる
タヌキ、婆さん殺害して婆汁に ←わからんがわかる
タヌキ、婆汁を爺さんに食わせる ←えええ!?
となるが、
そこで今まで1ミリも登場していなかったウサギが
「よし!私がタヌキを懲らしめる!」
って、ワケわからんくない?
だって、なんだかんだ言って
ウサギにもリスクはあるし、コストもかかる。
なのに「やる」一択って、なんなの?
だって、ウサギは
爺さん婆さんの血縁でもない(だったらビビる)。
爺さん婆さんに世話になってた描写もない。
ウサギ自身が、タヌキに私怨があった描写もない。
まさかウサギが爺さんに恋をしていたとかもないだろう。
となると、残る可能性は、もう、1つしかない。
それは、
「ウサギが快楽的サイコパスだった」。
これだ。
そうじゃなきゃ、あんな残酷なやり方で
何回も苦しめる妥当性が説明できない。
逆に「ウサギはサイコパスである」ならば、
すべて説明がつく。
たぶん、婆さんが猟奇的にやられたのを
「同じにおい」の嗅覚で嗅ぎ当て、
ただの顔見知りレベルの爺さんのところに行った。
すると、
「婆汁を作り、それをパートナーに食べさせる」
という、とんでもないサイコ行動に接触したわけだ。
その時、ウサギはこう思っただろうね。
「私よりもサイコパスなことをやる奴…
やるじゃない。そして許せない…」
と。
都合のいいことに
「爺さんの恨みを晴らし、婆さんの仇を取る」
という大義名分もある。
なんと、ウサギさんの目の前に
「サイコパスタヌキを超える方法で、
サイコパスタヌキを葬る」
という「快楽」が幸運にも訪れたのだ。
ウサギは表面上は爺さんに寄り添うようにしながら
爺さんの見えないところで、
背筋が凍り付くような狂気の笑みを浮かべていただろう。
そこからのタヌキの運命は、物語のとおりである。
背中に焚き木を背負わされて、それに火をつけられる。
その後、唐辛子味噌を背中に塗りたくられる。
最終的には、泥船を沈めさせられて溺死である。
ウサギはそれを見ながら、
性的なエクスタシーを感じていたに違いない。
なぜなら、サイコパスだから。
ただ、あと1つだけ疑問が残る。
それは、
「なぜタヌキは、何回もウサギに騙されるのか?」
である。
婆さんに口先三寸で捕らわれていた縄を解かせるくらい
タヌキは狡猾だ。
なのに、なぜウサギには3回も騙されとんねん??
普通、火がついたのはウサギのせいだと思うだろうし、
そんなウサギが「薬だよ」と持ってきたものなら、
一度はペロッと舐めてみるとかあるだろ?
それを猜疑心ゼロで塗ったり、
あげくの果てには泥船だぜ?
タヌキ、お前の狡猾さはどこへ行った?
かの太宰治先生は、
「ウサギを冷たい美少女、タヌキを中年オヤジ」
と見立てて、
「何回も騙されてしまう中年の哀愁」
と読んだが、それにしても、、、ねぇ?
となると、もしかしたら、
タヌキは、別のタイプのサイコパスだったのではないか?
つまり、自分のサイコパス行動を悔やみ、
止めたくてたまらないのだが、また罪で手を汚してしまうという。
「トメテ….ダレカ…. ボク ヲ トメテ….」
と、タヌキの心の中の善なる部分で
必死に叫んでいたのかもしれない。
だから、自分を亡き者にしてくれるウサギには
猜疑心フィルターが遮らない。
そう考えると、すべて辻褄が合う。(そうか?笑)
泥船が崩れ去って
水中に沈んでゆくタヌキは、きっと安らかな笑顔だっただろう。
さてさて。
カチカチ山が教えてくれること。
それは、
「サイコパスにも、色々な性癖がある」
「真のサイコパスには、絶対にかなわない」
「爺さんは、かぐや姫レベルで何もしていない」
ということかな。
みんな、正義を気取ったサイコパスには
充分、気をつけるんだよ!(笑)
ではでは。