最近、立て続けに書いている
「ナナメから童話」シリーズ。
本として出版されたのも含めて、今まで
『一寸法師(一部 桃太郎)』
『白雪姫』
『浦島太郎』
(↑ここまで本に掲載)
『わらしべ長者』
『シンデレラ』
『さるかに合戦』
そして最近
『ウサギとカメ』
『アリとキリギリス』
『三匹のコブタ』
と書いて来た。
さて、今回のナナメ読みは『金太郎』。
いつもと同じように、あらすじのおさらいから。
むかしむかしあるところにまさかりかついだ
金太郎がいて熊と相撲したりお馬さんごっこして
たわむれてましためでたしめでたし。
あれ?
短すぎね?
(まぁ、いつものあらすじも、たいがいだが)
そうなんだよね。
『金太郎』って、他の童話と比べても、
ストーリーがあるような、無いような、
そんな感じなんだよね。
たぶん、桃太郎や浦島太郎、一寸法師やかぐや姫なら
日本人のほとんどがあらすじを話せるけど、
金太郎に関しては話せない人って、多いんじゃないかな?
あなたは、どう?
でも。
なぜか『金太郎』は、
昔話の登場人物の中で人気が高い。
人によって意見の相違はあるだろうけれど、
「桃太郎」「浦島太郎」クラスの
認知度なんじゃないだろうか?
では、なぜ金太郎は大した物語もないくせに
(ひどいね、我ながら)
こんなにも有名なのだろうか?
そこには、2つの理由があるみたいなんだよね。
まず一つ目は「メディアによる強烈プッシュ」。
実は金太郎がこんなにもメジャーになったのは、
昭和初期くらいかららしい。
それまでは、いち地域の伝承物語だった。
が、静岡県小山町のみなさんのPR活動と、
当時さかんに叫ばれた「地域の教育力」があいまって
とうとう文部省制定の教科書に「金太郎」が出ることになった。
今で言うと「地域のゆるキャラPR合戦」の覇者が金太郎で、
優勝のごほうびで教科書に採用!
ということになるみたいだね。
教科書という不動のメディアが
金太郎を一気にスターダムに押し上げた、というわけだ。
波及効果の高い営業に成功した金太郎さん。
さすがっす!パネェっす!
しかし、それだけで
ここまで人気を維持できるものなのか?
どんなに大きなメディアを使っても、
その人気が一時的なものになるものは多い。
名誉のために詳しくは書けないけれど、
韓流スターとか、AKBとかの方が(←具体的じゃん)
メディアの後押しは強いだろうに、
金太郎さんほど長続きするかは微妙だ。
昭和初期の教科書なんて、
今の若者は目にしたこともないだろう。
それなのに、なぜ金太郎さんは
ずっと人気者でいられるのだろうか?
そこに、第2の金太郎さんのすごさがある。
金太郎さんのすごいところ。
それは、
「ユニークで、視覚化できる1エピソードがある」
というところ。
たぶん、力持ちの度合いで言えば、
岩手県の「力太郎」さんも、相当強い。
力太郎さんは、旅の途中で同じ力自慢の
御堂コ太郎や石コ太郎と戦い、勝ち、家来にしている。
しかも、ただ熊と相撲とっていただけじゃなく、
長者の娘をさらおうとした鬼、化け物を倒すという
社会貢献もしている。
なのに、なぜか「力太郎」さんは
「金太郎」さんに比べると、ややマイナーだ。
それはなぜかと言えば、
「旅の途中で家来をみつける?なにそれ桃太郎?」
とも思えてしまうし、
「長者の娘を助けた?ああ、一寸法師ね」
と“先駆者”たちと比較されてしまう立ち位置だから、
という理由が強いような気がする。
さらに、視覚的にわかりやすく、伝えやすいエピソードが
力太郎さんには少ない。
「老夫婦が身体をこすって作った
垢の人形が元気な赤ちゃんに!」
っていう誕生エピソードがあるにはあるんだけれど、
ビジュアルとして伝えにくい。
それより
「桃から元気に飛び出す赤ちゃん」
の方がワクワクする。
(岩手県の皆様、申し訳ありません。
個人的には、力太郎さん大好きです)
また、力自慢だったのだろうけれど、
そのエピソードが、ビジュアルにならない。
その点、金太郎は分かりやすい。
「マル金マーク入りの腹掛けをして
まさかりをかついだ男の子が、
熊と相撲を取ったり、お馬さんごっこしている」
というのは、ビジュアル的に
「ああ、力持ちなんだね」
とわかりやすい。
子供に伝える時にも、
「あんな大きなクマさんを倒すなんて、
金太郎さんって、つよいねー」
と伝えやすい。
そんな「口コミしやすさ」が、
金太郎さんをずっとスターにしている
大きな理由なんだろうね。
考えてみると、有名な昔話、童話は
すべて一枚の絵にしやすい。
絵のセンスがない人でも、
いたずら書きで
「桃太郎」も、
「浦島太郎」も、
「一寸法師」も、
「かぐや姫」も、
「シンデレラ」も
その他なんでも、1シーンを書けるだろうし、
その1シーンだけで
「ああ、あの昔話ね」
と分かってもらいやすいんじゃないだろうか?
金太郎さんは、物語としての完成度は低くても、
この
「1シーンのイメージしやすさ」
が突出しているがゆえの人気者なのだろう。
さてさて。
「メディアによる強烈プッシュ」。
そして、
「口コミのしやすく、
ユニークで、視覚化できる1エピソードがある」
という2点が、金太郎の人気を支えている。
たとえ、「物語」としての価値が低かろうと、
不動の人気を勝ち取ることができる最良の証拠だ。
最近はよく「ブランディング」なんて事も言われるし、
個人個人が埋没しないようにすることが
求められていたりもする。
あなたも「メディア」とまではいかなくても、
例えば会社とかで「分かりやすい1エピソード」が
あるのとないのとでは、大違いかもしれない。
金太郎さんには、ぜひ「ブランディング戦略」の
セミナー講師として、これからもご活躍願いたいね(笑)
え?
今回のナナメ読み、
物語のナナメ読みになっていないって?
ええ、わかってますよ、わかってますとも!
仕方ないじゃない?
金太郎さんのストーリー「強いぜ!」って事しか
書いてないんだもの。
まぁ、強いて言うと
「クマと相撲って、今なら動物虐待だよね」
とか読めるけれど、そもそも
みんなが共有しているストーリーが希薄なので、
「ナナメ」がなんなのか、分かりにくいんだもの(笑)
ま、こんなナナメ読みもあるということで。
ではでは。
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